厳しい信州の冬もようやく終わりをつげ、いよいよ信州にも春が到来!
春の花の代表格・桜よりも一足先に見ごろを迎えるのが杏の花です。
杏の一大産地である長野県の千曲市では「一目十万本」とも称される見事な絶景が広がります。
杏の花が満開になったとの便りを聞き、2022年4月9日に千曲市森を訪問したときのことをご紹介します。
江戸時代から盛んだった杏栽培
寒冷で乾燥した地が栽培適地と言われる杏。長野県と青森県で国内生産シェア9割以上を占めています。
青森県に次ぐ生産量を誇る長野県でもその生産地は限られ、産地と呼べるのは「千曲市」と「長野市松代町」くらいではないでしょうか。
諸説あるものの、これらの地における杏栽培の歴史は江戸時代までさかのぼります。
江戸時代に千曲市や長野市を含む、長野県の北部の地域を治めた松代藩。
その第3代藩主真田幸道公のもとに宇和島藩から嫁いできた豊姫が、故郷を偲ぶために杏の苗木を取り寄せ栽培したのが始まりとする説が語り継がれています。

長野市松代町にある「恵明寺」敷地内の豊姫の霊廟。訪れた日は杏がお供えされていました。
杏の薬効にも着目した松代藩は杏栽培を奨励。日本有数の杏産地として成長をとげました。
一面がピンク色に染まる圧巻の絶景
特に千曲市は「一目十万本」とも言われ、春になると山里一面があんずの花のピンクで染まります。
この絶景を多くの人に楽しんでほしいと、千曲市では杏の花の時期に「あんずまつり」を開催。
地域の人々や自治体によって、特設駐車場の運営や、出店の設置、杏畑の開放などが行われています。
「信州千曲市あんずの里 MAP」をもとに訪れた、各種絶景スポットをご紹介します。
杏スイーツとともに絶景を楽しむ「上平展望台」
横島物産さんの農園や、やなぎまち農園の杏の花々に囲まれた、あんず祭りのハイライトとも言える小径を上った先にあるのが「上平展望台」。
横島物産さんが運営をする杏加工品ショップ「花さか村」の屋上が展望台として開放。杏ソフトなども販売されており、杏スイーツとともに絶景を楽しむことができます。

花さか村でも横島物産さんの「あんずソフト」が購入可能
眼下に広がる杏畑の他、天気のよい日は北アルプス、戸隠連邦も一望できます。

北アルプスと戸隠連邦も遠くに見えました
山の斜面に広がる杏畑が美しい「大光寺に至る道」
上平展望台から道を挟んだ先の小径にも、杏畑が広がります。
途中には樹齢約300年にもなる在来種の大木も。
上平展望台からちょっと上っただけで、また違った絶景を臨むことができます。
巨大な木の正体は杏の在来種。大きいものだと7~8mもの高さになるとのこと。かつては、畑や家に境界木としての役割を果たしていたそうで、杏の木が人々の生活に密着していたことがうかがえます。

ピンクに染まる山里を眺める「窪山展望公園」
105台もの車が駐車可能な公営駐車場に併設された窪山展望台。
上平展望台とはまた違った角度から、里一面に広がる杏畑と山々の絶景を拝むことができます。
様々な品種が一堂に会する「あんずの里スケッチパーク」
「あんずの里」の原風景の再現をコンセプトとしている「あんずの里スケッチパーク」
そのコンセプトのとおり、敷地内には杏の古木や旧家を改装したお休み処が設けられています。

奥に見える背の高い木は移植した杏の在来種
平成25年には、当時の天皇・皇后さまも訪れたそうで、様々な品種の杏の花を楽しむことができます。

10種類ほどの杏の木を発見
敷地内では自由にお花見を楽しむことができ、レジャーシートを広げ、ゆっくりとお花見を楽しむ人々も。
じっくり、ゆったり杏の花を楽しめる、穴場スポットです。
里から斜面に広がる杏畑を俯瞰「薬師山展望台」
「上平展望台」、「窪山展望公園」、「大光寺に至る道」はすべて里の東側に位置しています。
数少ない、西側からあんずの里を臨む絶景スポットがこの「薬師山展望台」。
里から斜面にひろがる杏畑など、東側の各スポットとはまた異なった視点から、あんずの里を眺めることができます。
番外編:威風堂々たる「ケヤキの大木」
各種スポットから杏の里を撮影している中で、ひときわ存在感を放つのが「ケヤキの大木」
木の根や幹からは力強さが感じられます。
杏の収穫の時期にもぜひ訪れたい
6月から7月にかけて収穫を迎える杏。
足がはやいことから、シロップ漬けやジャムなど、加工品として流通することが多いですが、産地では生食で楽しむことができます。

杏の旬の時期(6月下旬~7月中旬)では直売所等で生杏が購入可能(写真はあんずの里スケッチパーク)。生食ならハーコットがおすすめ。
最後に:人々の生業が生み出す「あんずの里」の絶景
桜とはまた違った趣のある、杏のお花見。
杏栽培を守り受け継いできた人々の努力がこの、山里一面に広がる杏の花々の絶景を生み出しているのです。
そんなこの地域の人々の営みにも思いを馳せつつ、あんずの里の絶景をぜひ楽しんでみてくださいね。
<今回の散策ルート>
コメント